Aug.2025
ー福屋さんは老舗ですが、鈩前さん広島駅前店では何年くらいお勤めですか?
入社が22歳ですからね福屋での勤続は37年ですね。広島駅前店は1999年のオープンで丸25年経っています。私は25年のうちの20年以上は駅前店におります。当時から残っている人は本当にわずかで私が今一番の古株です。
ー広島駅前店が25年っていうのは意外と新しいと感じました。
駅前開発の“一番手”として出ましたけど、周囲は本当に何もなかったですね。広島駅も“駅”というより“駅舎”という風情で、まだ“街”ではなかったんですよ。
広島の人にとって“駅”は“広島駅”であって、八丁堀、紙屋町界隈の“街”とは別物だった。
ただ電車に乗るための場所、という雰囲気でしたね。
ー鈩前さんは広島のご出身ですか?
そうです。
ー鈩前さんご自身は昔から広島駅周辺には馴染みがございましたか?
子供の頃の広島駅のイメージって「遊びに来る」ところでは無かったんですよね。遊びに行くと言ったらやっぱり八丁堀や紙屋町でしたよね。
―この25年間、間近で変化をご覧になってこられたと思いますが?
ほんの少し前まで街全体が今のエキニシの様なイメージでしたね。Cブロックの建て替え以前の市場の雰囲気なんかはそうでしたね。Bブロックが解体される時期に私はちょうど5階から9階の担当だったので様子をよく見てましたけど、小さいビルがいっぱいあったのを見て驚きましたね。
それを思い返せば今は隔世の感ですよね。25年前に一人ぼっちでいたところへ続々とライバルというか仲間が増えてきました。マツダスタジアム、Bブロック、Cブロック、最後にこの広島駅ビルですね。
これから駅の2階レベルに広島電鉄が乗り入れて、駅ビルから南側へ向けてペデストリアンデッキが繋がるとなると、さらに人の流れが変わってくると思います。もっと長く滞在できる街になれば良いですね。
ー新駅ビルの開業にあわせて街全体が盛り上がりそうですね。
期待しています。あと周辺との回遊性も重要ですね。広島の色々な街に、楽しめるコンテンツがあって、気の利いたお店があって、美味しいものがあって、と広島駅周辺もですが広島全体でそういう街になっていかないといけないなと思います。
ー街全体が変わっていく中で福屋さんとしての取り組みはございますか?
現在、広島駅前店は改装の途中で、まだ手探りのところもありますが、来街者の方も変わってきていますので多くのお客様にアジャストしたいというか、そういった役割を果たしていきたいと考えております。百貨店だから出来るにぎわいの創出だったりコンテンツの提供は私たちの役割だと思いますね。
福屋は地元の百貨店ですから、そういった意味でも玄関口である駅前に居る役割を果たしていきたいと思っています。
ー球場の移転による変化はいかがでしたか?
やはり駅周辺の変化の最初のきっかけは球場の移転ですかね。それにより年間220万人の方が広島駅周辺に来てくれるようになりました。
福屋はカープさんが応援グッズとして最初にタオルを作り始めた頃からずっとお取引があり、今では半分「カープ百貨店」と呼んで頂けるくらいのお店になっていますが、最初は本当に棚1枚から始まったカープグッズ売り場でした。毎年、球団にご協力いただいて3回ほど大きいカープイベントをしたり、オリジナル商品の開発も行っています。
それらも、やはり球場移転がポイントだったと思いますね。球場移転から15年の間には3連覇があったり「カープ女子」という言葉が流行ったりしました。いまだに球場に行ったら女性ファンが多いですよね。うちのお袋でも行くんですから(笑)。もう老若男女問わずですよね。日本中探してもそんな球場ないんですよ。
グッズで言えばカープは12球団でやっぱりトップなんですよ。昔はダントツトップだったと聞いていましたが今は他球団も真似してきていろんな面白いグッズ作っておられますね。それでもやっぱりカープさんのトンチがひとひねり効いたああいうグッズ作りというのは私達も参考になるというか、負けられないという感じです。
球場とカープがあることによって街の滞在時間は上がってきていると思いますよ。
ー試合当日は観戦前に地下でお買い物される方も多いですよね。
普通、百貨店にユニフォームのまま行くなんてあまり無いと思うのですが、広島では普通の事ですね。
ーそれは福屋さん、というか広島ならではですかね?
在京、在阪球団のファンがユニフォーム姿で百貨店に寄って・・やっぱり着ていかないだろうなぁ(笑)。
カープファンだけですよね、家からユニフォームで出かけてお買い物に来てくれるのは。
ーそれを当たり前に受け入れてくれるのが地元の百貨店ですね。
私達は広島の百貨店ですからね。ご来店いただいたお客さんを大事にしていくということです。そこは大事にしていきたいですね。
ー街の変化をお伺いしてきましたが、反対に変えたくない、残していきたいものはございますか?
お客様から私達は「福屋さん」と呼ばれるんですよ。なにかあれば「福屋さんとあろうものが」とお叱りも受ける。
これは私たちが作ったわけじゃなくて、過去の先輩方が広島のお客様と作り続けてきた信頼関係や安心感とか温かみとですね。そこは大事にして、これからも「福屋さん」と呼ばれ続けたいですね。
―地元の百貨店への信頼ですね。
今からもそう呼ばれ続けるように努力は必要です。品揃えなどは時代にあわせて変化があるんですが、根っこの部分ですよね。目の前のお客さんを大事にするという、この根っこの部分は大事にしていきたい。2回、3回とご来店いただける努力をするという事ですね。
ー鈩前さんご自身の広島駅周辺でのお気に入りの場所を紹介していただけませんか。
沢山ありますけど、まずはマツダスタジアムでしょうね。他県の球場に行くこともありますがお客さんも含めてマツダスタジアムの様な球場は他にはないですね。
あとA館の南側の河岸緑地から川の駅にかけての川沿いの景色の綺麗さですね。春の桜に始まって新緑、秋の紅葉まで一年中良い景色です。
景色で言えば11階のフードコートだったり屋上も景色が良いですよ。
ー今回、他の会員の方にお話を伺うなかでフードコートはよく出てきています。
11階という高いフロアにフードコートを設けるという困難さはあるんですけど、景色も良いですし、ご好評頂いております。夏は暑いんですけどね。
―暑くても景色の良いあの席に行きたいって皆さんおっしゃっていました。
こんど8階から10階に移転してくる図書館も南側に大窓が設置されますので、そこも楽しみですね。
フードコートや図書館、その下には福屋の店舗があり、その他、お医者さんがあったり銀行があったり。色々な理由でお客様に来ていただける建物にはなってくるといいですね。
ー今回の駅ビルの工事の様子もずっと11階からご覧になられましたか?
11階フロアの北側に面したお店の窓からは広島駅ビルの工事がずーっと見られました。
JRさんより私達は見てますよ(笑)
タイムラプスですか?あれをやっとけば良かったですね。
先日の広島電鉄の橋桁の移動も見ましたが「こんな事が出来るんじゃ、人間の力すごいな」って思いましたね。
日々景色の変化を目の当たりにしていますが25年前は周り何もなくて、北側は二葉山が見えて、南に目を向ければ宮島も江田島も見えているような所でしたからね。
あらためて隔世の感があり、これから益々楽しみですね。
~5階カープグッズ売り場にて~
福屋広島駅前店
広島市南区松原町9-1
⇒ホームページ:https://www.fukuya-dept.co.jp/ekimae/